投稿日:2024.10.15
マウスピース矯正が適応しないパターン
歯列矯正をすると決めたとき、まずは治療方法を決めなくてはいけません。
理想の位置まで歯を移動させて歯並びを整えることを目的としていますので、装置を使って歯に力を与えることが必要になります。
その方法として選択するのが、マウスピース矯正とワイヤー矯正のふたつになります。
ただ、マウスピース矯正の場合どの症例にも適応する訳ではないためここでご説明していきたいと思います。
マウスピース矯正とは?
名前の通りマウスピースをはめて歯を移動させる方法になります。
透明に近いプラスチック製のもので、厚さは4〜5mmほどになります。
目立ちにくく自分で取り外しができるため、歯磨きや食事の時は外すことができストレスがかかりにくいのがメリットです。
マウスピースの作成は個々の歯並びを専用スキャナを使ってデータ化し、それを元にいくつかのマウスピースを作成し、数週間ごとに取り替えて装着していきます。
そうすることで少しずつ理想の歯並びに移動させていくという方法です。
全ての医院が専用スキャナを使用しているわけではありませんが、自分の管理下で行えるので患者さん自身の負担をかなり軽減して行える治療となります。
期間的には治療する範囲や程度によって差はありますが、おおよそ半年〜2年半ほどが目安とされています。
食事と歯みがき以外は装着している必要がありますが、ワイヤー矯正と比べて目立ちにくく口内炎などの心配もないため本人の意志があればとても画期的な治療法になります。
だた、全ての歯列矯正に適応する訳ではないため次の章で詳しくご説明していきます。
マウスピース矯正が適応しない症例
①抜歯する歯が多い
歯列矯正はスペースを確保するために抜歯をしなければいけないときがあります。
その場合、抜いた後のスペースを埋めるために歯を大きく平行移動する必要があります。
歯を大きく移動させることを得意としないマウスピースは適応しない可能性が高くなります。
ただ、ワイヤー矯正である程度歯を動かした後にマウスピース矯正に切り替えたり、工程の一部をマウスピースによって行うなど併用することで治療をスムーズに進める方法もあります。
②歯列不正が重度の場合
歯並びがひどくガタガタとしている叢生、受け口や出っ歯など上下のどちらか一方の歯が大きく前に突出している場合には適応しません。
特に受け口と出っ歯は、前歯だけではなく全体的に歯を移動させて正しい噛み合わせの確保が必要になります。
抜歯の症例でも話したように、マウスピースは大きく歯を移動させることを得意としていないため、重度の場合は不向きとなってしまいます。
歯列不正の程度については同じ矯正専門医であっても判断に多少違いがあります。
何人かの意見を聞いたりしながら自分が納得できる診断を受けるようにするといいでしょう。
③骨格に問題がある
受け口や出っ歯になってしまうのは、歯並びが原因だけではありません。
遺伝的な理由から下顎の成長が著しいため受け口になってしまったり、反対に下顎の成長が足りずに出っ歯になってしまうこともあります。
その場合、歯列矯正だけでは改善出来ません。
外科手術によって顎の骨を削りバランスを整えた後マウスピースなどによって最終仕上げを行います。
④インプラントが埋入されている
インプラントとは、歯を失ったところに人工的な歯根をつくり自分の歯のような状態まで再現させることができる治療法です。
通常、歯の根っこは歯根膜で覆われていて噛む力などを緩和する役割があります。
しかし、インプラントにはこの歯根膜は存在しません。
歯を動かすときは移動させたい側の歯根膜を縮小させて行うため、歯根膜のないインプラントは移動させることが出来ないことになります。
ただし、インプラントではない周りの歯を動かすことは可能です。
インプラントの位置や本数、理想とする歯列によって可能な場合もあるのでマウスピース矯正が希望であることを専門医に伝えてみましょう。
⑤重度の歯周病
歯周病とは、歯を支えている骨が細菌によって溶かされていく病気です。
進行すれば歯の動揺は愚か最後には抜けてしまうことになります。
定期的に歯科受診をしてクリーニングを行ったり、正しい歯磨きの仕方を教えてもらって実践していれば予防することが出来ます。
ただ、進行してしまった歯周病を元の状態に戻すことは難しく、これ以上進まないよう維持していくことが目標となります。
矯正治療では歯の移動を行った後、歯を支えるための骨である歯槽骨の再生が必要不可欠です。
重度の歯周病ではこの再生が難しいためマウスピース矯正を含めて全ての歯列矯正が難しくなります。
⑥自己管理が得意ではない人
マウスピース矯正は自分で取り外しが可能で始めやすい矯正治療と言えます。
個人差はありますが、痛みを強く感じることも少なくストレスがかかりにくい方法です。
しかし、マウスピースを装着することは普段と違う状況での生活になるため苦痛と感じる人がいるのは確かです。
そのため、自分での管理が甘くなって決まった時間装着出来なかったり度々お休みしてしまっては効果は得られません。
自分で取り外しが出来ない状態で、強制的に治療が行われていくワイヤー装置の治療の方が向いているかもしれないと思う方は最初からマウスピースを選択しない方法もあります。
また、小学校低学年のお子さんに歯列矯正を考えている親御さんも、本人が治療をどれだけ希望していてマウスピースを装着し続けることができるのかを話し合ってから決断するようにしましょう。マウスピース矯正以外での治療法
マウスピース矯正以外での治療法
マウスピース矯正を選ぶ方の理由として、矯正治療していることが目立たないことや異物による口腔内の違和感が少ないことが挙げられると思います。
しかし、何らかの理由で難しいとされてしまった場合、他にどんな方法があるのかみていきたいと思います。
①ワイヤー矯正
マウスピース矯正が難しい場合に最も多く行われるのが、ブラケットと呼ばれる金属を歯の表面につけてワイヤーを通す方法です。
マウスピースと同様に数週間ごとにワイヤーをしめていきながら歯に力を加えて移動させます。
手入れを怠ると虫歯になりやすかったり口内炎が出来てしまうこともありますが、専門医だけが装置の取り外しを行えるため自己管理の負担は少なくなります。
また、ワイヤー矯正は細かな調整が行えるため効率よく治療を進めることができるのが最大のメリットです。
最近では目立ちにくくするためにクリアタイプのブラケットを使用しているところもあります。
見た目が気になる方は一度聞いてみるといいと思います。
②裏側矯正(舌側矯正)
どうしても見た目が気になってしまう方もいらっしゃると思います。そのような方にはブラケットとワイヤーを歯の裏側につける方法で解決できます。
表側と同じ装置を歯の裏側につけていくので表側には一切装置はつきません。普段の会話くらいでは装置が見えてしまうこともなく、誰にも気づかれずに治療を進めることができるのです。
しかし、デメリットとして裏側に装置をつけるのは技術的に難しく、表側に比べて費用が高くなってしまうことや舌に当たって口内炎ができやすくなることがあげられます。
他にも、ワイヤー治療で大きく歯の移動をした後にマウスピースに切り替えて最終仕上げをしていく両方の装置を組み合わせる治療法もあります。
近年ではマウスピースでの歯列矯正が全国各地でだいぶ普及してきました。
さらに、スキャナを使った歯型の再現により患者さんの負担を大きく減らすことまでできるようになりました。
どの治療法にもメリットとデメリットがあり、どちらがいいということでもありません。
患者さんの年齢や生活状況に合わせて選択の幅が広がってきたことは、歯列矯正がより皆さんに身近になってきているのだと感じています。