歯のでこぼこや出っ歯などを審美歯科でも治せると聞きました。矯正治療と審美治療のどちらを選ぶべきですか?

最近はセラミック矯正と言うような表現をするクリニックがありますが、一般的な歯列矯正とはまったく別のものです。

まず整理しますが、歯ならびを綺麗にしたい場合には、「矯正的な審美治療」と「補綴(ほてつ)的な審美治療」があります。どちらも見た目を整えたい、綺麗にしたい方には同じように感じるかも知れません。

ただ、正しい知識を持っていないと、時間を掛けて歯列矯正をするよりも、審美治療で差し歯にする短期的な治療や、ラミネートベニア(歯に素材を貼り付けて審美効果を上げる方法)の方が、期間も短く・低価格で見た目を綺麗にしたいという目的を叶えることができると勘違いしがちです。

歯列矯正か審美治療か、ではなく治療のアプローチが重要です

よく「歯列矯正が優れている」とか、「審美治療が早くて良い」という話になりがちですが、実はどちらも間違いで、大切なのはクリニック選びです。

クリニックを選ぶ際には、患者さんのお悩みをしっかり伺って治療のメリット、デメリットを説明し選択肢を提案してくれるクリニックであるかどうかが重要なポイントです。矯正歯科も審美歯科も無料カウンセリングを受けつけているクリニックは多いので、メールや電話での対応・カウンセリングの内容から検討しましょう。

審美治療でも、機能面を考慮した治療は時間がかかります

矯正治療が複数年になるというのはご存じだと思いますが、患者さまの歯と噛み合わせ、体のバランスを考えた審美治療(特に本数の多いフルマウス治療など)は、2年から3年程度の期間がかかることは珍しくありません。

一方、審美治療でも噛み合わせやお口の筋肉などを徐々に慣らしながら治療を進めていくものもあり、そうした治療では、矯正治療と変わらない噛み合わせの改善と歯並びの美しさを得ることが可能です。ただ数十本ものセラミックの被せ物を作りますから、結果として自分の歯を並べる矯正治療より高額になりがちです。

気をつけなければいけないのは「短期間で、安く、早く」と宣伝されているようなセラミック矯正です。お伝えしたように、健康な歯を削って無理やり被せる、見た目だけを優先したセラミック矯正では、かみ合わせや筋肉の動きなど機能の問題を解決できません。歯並びの乱れや噛み合わせの悪さには必ず原因があります。審美歯科でのコンビニエンスな「セラミックの矯正」はその根本原因を解決するものではありません。

正しいかみ合わせ・本当にきれいな歯並びは
時間をかけて実現するものです

歯ならびの治療は費用も高く治療期間も長くなりがちなので、つい安くて早い方法が気になってしまいますが、真剣に考えて悩んで来た歯並びだからこそ、安易な治療を選ばずにじっかりと専門家の話を聞いて納得できるクリニックで、歯並びの治療を受けてください。

歯科医の立場からは機能性と美しさを兼ね備えた本当の治療は、丁寧な工程と時間がかかることをご理解頂きたいと思います。ただその時間こそ、患者さまの将来的な利益に繋がると考えています。