投稿日:2024.12.3
ワイヤー矯正で歯が動く仕組みとは?どうや って歯を動かすのか徹底解説!
ワイヤー矯正は歯列矯正の中でも、スタンダードな治療法です。しかし、治療法は知っていても歯が動く原理を知らない方が多くいます。
ワイヤー矯正で歯が動く仕組みを知ることで、下記のようなメリットがあると考えます。
矯正治療の不安を取り除いて安心できる
矯正中に痛みが発生する原理がわかり、対処しやすい
そこで今回は、ワイヤー矯正で歯が動く仕組みについて紹介します。ワイヤー矯正の種類や歯列矯正で歯が動きにくいケースなどもあわせて解説。
これから歯列矯正を始めようと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。なお、当院の矯正治療の流れや費用等について詳しく知りたい方は、こちらのページをあわせてご覧ください。
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目次
ワイヤー矯正で歯が動く仕組み
ワイヤー矯正で歯が動く仕組みを知る前に、まずは歯の構造について知っておきましょう。歯の周辺には根と骨の間にある「歯根膜」、歯を支えている「歯槽骨(顎の骨)」といった組織が存在します。
これらの組織の中でも特に歯根膜の性質を利用して歯を動かしますが、ワイヤー矯正で歯に力をかけると、組織が下記のような働きを行うことで歯が動くメカニズムが発生します。
- 歯根膜が伸縮する
- 骨が活発化する
- 歯根膜が安定する
それぞれについて、詳しく解説します。
歯根膜が伸縮する
そもそも、歯根膜は噛んだ時の衝撃をやわらげるクッションや根と歯槽骨を繋ぐといった役割がありますが、矯正の時には歯根膜が伸縮します。ワイヤー矯正で歯に力を加えると、歯根膜にも力が伝わるためです。
たとえば左側から右の方向に歯を押すと、左側の歯根膜は引っ張られて伸び、右側の歯根膜は圧迫されて縮みます。
骨が活発化する
歯根膜は、一定の厚さに膜を維持しようとする性質があります。矯正装置で一方方向から歯に力をかけたことで、左側の引き伸ばされた部分と右側の縮んだ部分の厚さを均等にしようとする時、骨が活動を始めるのです。
左側の引き伸ばされた歯根膜は元の厚さに戻ろうと、骨を再生させる骨芽細胞(こつがさいぼう)を作ります。いっぽう、縮んだ歯根膜は元の厚さになろうと、骨を溶かす破骨細胞(はこつさいぼう)が活発になります。
歯根膜が安定する
歯にかかる力の方向にあわせて、骨を再生させる骨芽細胞と骨を溶かす破骨細胞を繰り返すことで、歯は少しずつ歯槽骨の中を移動していきます。こうしてできた骨は数週間かけて少しずつ硬くなっていき、最終的には歯を固定する丈夫な骨になるのです。
ワイヤー矯正中に痛みが出るのはどうして?
先述したようにワイヤー矯正では、骨の吸収と再生を繰り返して徐々に歯を動かします。ワイヤー矯正で痛みを感じるのは、骨が吸収される時に歯の根の周りが炎症を起こすため、痛みが生じると考えられています。
特に、矯正治療の初期は歯にかける力が大きくなるため、痛みを感じやすい傾向です。ただ、痛みが長期的に続くわけではありません。
歯並びが整っていくに連れて歯への負荷が少なくなり、徐々に痛みが軽減していきます。痛みの感じかたは個人差があり、痛みが辛い場合は我慢せず担当医に相談しましょう。
なお、ワイヤー矯正で痛みが出る理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせて確認しておきましょう。「ワイヤー矯正の痛みについての記事があればリンクを挿入】
ワイヤー矯正装置の仕組み
次は、ワイヤー矯正の装置について見ていきましょう。ワイヤー矯正の主な特徴として下記が考えられます。
- 基本的な装置ブラケットとワイヤー、結紮線
- 細かい調整が可能
- 1ヶ月で歯が動く距離
- 月に1度の調整が必要
- メインテナンスの重要性
それぞれについて詳しく解説します。
基本的な装置ブラケットとワイヤー、結紮線
そもそも、ワイヤー矯正では歯の表面にブラケットを付けた上にワイヤーを通して、引っ張りながら歯並びを整えます。
ブラケットは専用の接着剤で歯の表面、1本1本に付けます。ブラケットにはスロットと呼ばれる溝があり、スロットにワイヤーを通した後、結紮線(けっさつせん)という細いワイヤーでブラケットとワイヤーを固定。
結紮線は装置を固定するだけでなく、縛る量で歯にかける力をコントロールする役割があります。
細かい調整が可能
歯1本1本にブラケットを付けているため、細かい微調整が可能。理想的な歯並びを追求でき、自然な仕上がりにできます。
そのため、ワイヤー矯正は複雑な歯並びにも対応できるのです。
1ヶ月で歯が動く距離
ワイヤー矯正で歯が動く距離は、1ヶ月で0.3mm〜1mmほどです。そのため、歯が動いて歯並びがキレイになってきたと感じるのは、矯正治療を始めてから半年後くらいで実感するケースが多いです。
また、歯に加える矯正の力が強いほど、歯が大きく動いたり移動するスピードが早くなったりしません。歯に過度な力をかけ続けると、歯茎や根のダメージになりトラブルが起きる可能性が高くなります。
月に1度の調整が必要
ワイヤー矯正は月に1回、歯科医院で調整が必須。調整時には口内の状態や歯の動きにあわせてワイヤーの交換や力の加えかたを調整します。
たとえば矯正開始頃は細いワイヤーで弱い力を歯にかけて、ある程度歯並びが整ってくると、太いワイヤーで歯にかける力に変化を加えていくケースがあります。口内の状態にあわせてワイヤーの太さや形を変える必要があるため、定期的な通院が必要になるのです。
メインテナンスの重要性
ワイヤー矯正の装置は歯に固定させるため、患者自身で取り外しができません。食事の際には食べかすが装置の周りに溜まりやすいです。
特に、繊維質の多い食材はブラケットに絡みやすく、取るのが難しくなる傾向です。そのため、磨き残しが多くなり虫歯や歯周病のリスクが高まります。
月に1度の調整日では装置の調整の他に清掃状態を確認し、歯のクリーニングを行う歯科医院がほとんどです。普段の歯磨きでは取りきれない汚れを除去することで、矯正中の虫歯や歯周病の発症を防ぎます。
ワイヤー矯正の種類
ワイヤー矯正には、主に次の3つの種類があります。
- 表側矯正
- 裏側矯正(舌側矯正)
- ハーフリンガル矯正
それぞれの装置について、詳しく解説します。
表側矯正
表側矯正とは上下の歯の表側にブラケットやワイヤー装置を付けて、歯並びをキレイにする治療法のこと。一般的には金属のブラケットやワイヤーを使用しますが、近年は金属の目立つ装置に抵抗がある方が多く、目立ちにくい装置に変更するケースが多いです。
表側に装置を付けるため舌の動きを制限せず、今までと変わらずに発音できるのがメリット。いっぽうで、歯並びの状態によっては口元に厚みが出て、もっこりとした口元になりやすい点がデメリットです。
なお、目立ちにくいワイヤー装置に興味のある方は、こちらのページも一緒に確認しましょう。【白いワイヤーのメリットは?の記事リンクを挿入】
裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正は歯の内側にブラケットやワイヤー装置を付けて、歯並びを整えていく方法のことです。歯の内側に装置を付けるため、矯正していることが他人に知られる心配がほとんどありません。
食事の際には食べかすが詰まりやすいですが、装置の見た目を気にせず食事を楽しむことができます。また裏側矯正は舌に装置が当たり、発音しにくい傾向です。
しかし、話しにくいと感じるのは矯正初期で人によっては、数週間〜1ヶ月ほどで装置が付いている状態に慣れて、問題なく発音できるケースが多いです。
なお、当院では裏側矯正を取り扱っています。当院の裏側矯正について、詳細を知りたい方はこちらのページもあわせて一読ください。
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ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正とは上顎は歯の内側に、下顎は表側にワイヤー装置を付けて歯並びをキレイにする治療法のことです。表側に付けた装置のほとんどが唇で覆われるため、目立ちにくくなっています。
片顎だけ裏側矯正にすることで、上下の裏側矯正に比べて費用を抑えられます。そのため費用を抑えつつ、目立ちにくい方法で矯正がしたい方におすすめの治療法です。
なお、当院ではハーフリンガル矯正を実施しています。詳しい治療内容を知りたい方は、こちらのページも一緒にご覧ください。
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ワイヤー矯正で使用することがある装置
ワイヤー矯正は奥歯を前歯側に移動、根の向きを変える、丸い歯を回転させるといった動きが得意です。いっぽうで、歯を根の方向に沈み込ませる(圧下)や奥歯をさらに後ろに移動させる動きが苦手です。
そのため従来のワイヤー矯正は、最終的な歯並びに影響を及ぼすことがありました。しかし現在はワイヤー矯正時に以下の装置を使用することで、より幅広い症例に対応でき、理想的な歯並びを追求可能です。
- 歯科矯正用アンカースクリュー
- セルフライゲーションシステム
歯科矯正用アンカースクリュー
歯科矯正用アンカースクリューとは、小さいネジのこと。顎の骨にスクリューを埋めて固定源にすることで、効率的に歯を動かすことができます。
歯科矯正用アンカースクリューを使用すると、下記のようなメリットが考えられます。
- 非抜歯での矯正が可能
- 治療期間の短縮
- 理想の口元を実現
- 外科矯正を避けられる
- 見た目の改善・患者の負担軽減
なお、歯科用アンカースクリューについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をあわせて確認しましょう。【歯科用アンカースクリューについての記事リンクを挿入】
セルフライゲーションシステム
セルフライゲーションシステムとは、自然な力を利用して歯を動かす治療法のこと。主に、セルフライゲーションシステムを、取り入れているブラケットのことを指します。
通常のブラケットは、溝にワイヤーを通して結紮線やゴムで固定します。しかしこの方法では、ブラケットとワイヤーの間で摩擦が発生して動きが鈍くなる点がデメリット。
いっぽうで、セルフライゲーションブラケットには開閉できるシャッターやクリップが付いていて、ワイヤーをブラケットに挟み込めるため、結紮線やゴムなどで固定する必要がありません。
ブラケットとワイヤーの間に余白ができ、摩擦が起きにくく効率的に歯を動かすことができるのです。他にも、セルフライゲーションブラケットを使用することで、下記のようなメリットが期待できます。
- 治療期間の短縮
- 痛みの軽減
- 歯や組織への負担の減少
- 非抜歯の可能性
なお、当院ではセルフライゲーションシステムを取り入れています。興味のある方はこちらの記事も一緒にご覧ください。
【セルフライゲーションシステムについての記事リンク挿入】
ワイヤー矯正でよくある質問
ここではワイヤー矯正についてよくある質問を紹介します。
Qワイヤー矯正では抜歯をしないとダメですか?
Aワイヤー矯正で抜歯は、必須ではありません。歯を削って隙間を作るIPR(ディスキング)という方法や矯正用アンカースクリューを使用することで、非抜歯で済むケースも少なくありません。
ただし、歯を並べる隙間がない、理想的な歯並びを追求したいといったケースでは抜歯をすることがあります。
Q食べ物に制限はありますか?
A硬い食べ物(せんべい・ナッツ)や粘着性のある食品(キャラメル・ガム)、線維性の多い食品(きのこ・野菜)は、控えましょう。歯に固定している装置が、外れたり壊れたりするためです。
Qワイヤー矯正の装置が取れたらどうしたらいいですか?
Aなるべく早めに歯科医院へ連絡しましょう。外れた装置の器具や生活に支障がない場合には次の調整日にまとめて対応するケースがあります。また、取れた装置は捨てずに保管して来院時にお持ちください。
Qワイヤー矯正で歯が動かないことはありますか?
Aワイヤー矯正に限らず、歯列矯正時に口内が下記の状態になっていると歯が動かないことがあります。
- アンキローシス:歯と顎の骨がくっついている状態のこと
- 咬合力が強い:食いしばりや歯ぎしりといった噛む力が強い
- 舌癖が残っている:舌で歯を押す癖が改善していない
なお、歯列矯正で歯が動かない原因について知りたい方は、こちらも一緒に読んでおきましょう。【歯が動かない原因についての記事があればリンクを挿入】
まとめ
ワイヤー矯正では、歯根膜が元の厚みに戻ろうとする性質を利用して歯を少しずつ移動させて歯並びをキレイにしていきます。適切ではない力を歯に加え続けると、根が短くなる歯根吸収や歯茎が下がる歯肉退縮といったリスクが高くなります。
そのため、矯正治療の実績や経験が豊富な歯科医院で治療を受けるようにしましょう。また、ワイヤー矯正は理想的な歯並びを追求したい方にもおすすめな治療法です。
ワイヤー矯正が自身の歯並びに適応するのか知りたい方は、いつでもご相談ください。
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