投稿日:2024.12.13
開咬(オープンバイト)は矯正で治せる?原 因と治療方法について
結論から言うと、開咬は歯列矯正で治せます。開咬は不正咬合の一種で放置していると、さまざまなトラブルの要因になりやすいです。
そこで今回は、開咬の原因や治療方法について解説します。開咬を放置するリスクについてもあわせて紹介。
開咬の治療を考えている方は、是非この記事を参考にしてください。
開咬とは?
開咬とは噛んだ時に上下の前歯の間で、大きな隙間がある状態のことです。
別名、開咬はバイト(噛み合わせ)がオープン(開いている)という意味からオープンバイトとも呼ばれています。
軽度の開咬は一見歯並びがキレイに見えるため、噛み合わせに問題があると気づかない場合も少なくありません。
麺類が前歯で噛み切れない、食べこぼしが多いといった症状で開咬だと気づく方が多いです。
開咬の原因
歯並びが開咬になるのは、以下の原因が考えられます。
● 遺伝的要因
● 爪を噛む・舌癖
● 口呼吸
● 舌小帯が短い
それぞれについて詳しく解説します。
遺伝的要因
親からの遺伝が原因で、開咬になることがあります。
親が開咬だと歯の形や大きさ、骨格が子どもに遺伝して開咬になる可能性が高いです。
特に下あごが小さい、後ろに後退しているといった状態は開咬になりやすい傾向です。
爪を噛む・舌癖
日常的な悪習慣(悪い癖)は開咬を引き起こしやすい要因です。
たとえば、爪を噛む癖は指で歯の裏側を押すため、前歯が外側に向きやすく開咬のリスクが高くなります。
また舌で歯を押す、不自然な位置に舌を置く癖は無意識に歯に力がかかって、開咬になりやすい傾向です。
口呼吸
口呼吸が癖になっていると、歯並びにも影響を及ぼします。
通常、舌は上顎の裏側のへこみに位置しているのが一般的。
しかし口呼吸では、舌の位置が歯の位置まで下がる低舌位(ていぜつい)になるため、前歯を押して開咬を引き起こす可能性が高いでしょう。
舌小帯が短い
舌小帯は、舌の裏側にある筋のこと。舌小帯が短いと舌が広範囲に動かせず、上あごまで届かないことも少なくありません。
その結果、舌が低舌位になることで、口呼吸を行う癖がついて歯並びが悪くなります。
開咬を放置する6つのリスク
開咬を放置すると、次の6つのリスクが起こり得ます。
● 心理的ストレス
● 虫歯や歯周病
● 歯の摩耗・亀裂
● 消化不良を起こしやすい
● 顎関節症の発症
● 発音の不明瞭さの増大
それぞれについて詳しく解説します。
心理的ストレス
開咬が重度の状態になるほど見た目の影響が大きくなり、口元がコンプレックスになっている方も少なくありません。
さらに唇がしっかりと閉じられず、無理に閉じようとすると厚みが出て猿のような口元になりやすいです。
そのため口元を隠して会話をする、歯並びが見えない笑いかたをするようになり、心理的ストレスを強く感じる傾向です。
虫歯や歯周病
開咬は上下の前歯に隙間があり、口内が乾燥しやすい状態です。
口内の乾燥状態が続くと、唾液の分泌が減少。
唾液の効果を受けにくくなります。
唾液には殺菌作用や洗浄作用などの働きがあり、虫歯や歯周病予防の効果が期待できます。
しかし、唾液の作用を受けにくいと細菌が活発になり、虫歯や歯周病が発症するリスクが高まります。
また、同時に口臭が強くなる傾向です。
歯の摩耗・亀裂
開咬は前歯が噛み合っていない分、奥歯への負担が大きくなります。
奥歯への過度な負担は亀裂やすり減りが起きやすく、場合によっては痛みやしみるといった症状が出る可能性も否定できません。
過度な歯への負担は寿命が短くなり最悪、抜歯になることもあります。
自分の歯を長く使い続けるためにも、早期の診断・歯列矯正が大切です。
消化不良を起こしやすい
噛むという行為は、歯で咀嚼することだけではありません。
食事をする時のステップとしては食べ物を前歯で掴む、噛み切る、口を閉じる、奥歯ですり潰すといった流れが一般的です。
しかし開咬は、前歯が噛み合っていないため食べ物を掴む、噛み切る動作ができません。
しっかりと唇を閉じることができない場合は、食べ物を飲み込む時に前歯が舌で押されてしまいます。
このように開咬では正しい食べ方ができず、咀嚼回数が少ないまま食べ物が胃に運ばれるため、消化器官の負担になりやすいです。
顎関節症の発症
開咬は顎関節への負担が大きく、顎関節症を発症しやすい歯並びと言われています。
特に、下あごが小さく奥歯側に下がっているタイプは顎関節が小さく、耐久性に弱いため顎関節症を引き起こす傾向です。
顎関節症になると口の開閉が難しくなり、症状が悪化した場合には痛みを伴うことがあります。
発音の不明瞭さの増大
開咬を放置すると、発音の不明瞭さが増大する恐れがあります。
発音する時に前歯の間の隙間を埋めようと、舌が前に突き出てしまうためです。
特にサ行やタ行の不明瞭さは増大しやすく、いわゆる舌足らずの発音になる傾向です。
言語コミュニケーションの困難は、QOL(Quality of life)=生活の質に悪影響を及ぼすことがあります。
発音の不明瞭さや話しにくさを感じた場合には、早めに歯科医院に相談しましょう。
開咬の矯正方法と費用相場
開咬の治療は、大まかに3つの方法があります。
それぞれの治療法や費用について詳しく解説します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは歯の表面にブラケット装置を付けた上に、ワイヤーを通して歯を引っ張って歯並びを整える治療法のことです。
開咬の軽度〜重度に対応できるほど、適応範囲が広い矯正装置になります。
ワイヤー矯正には以下の3種類の矯正装置があり、特徴が異なります。
● 表側矯正
● 裏側矯正(舌側矯正)
● ハーフリンガル矯正
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
表側矯正
表側矯正は上下の歯の表側にブラケットやワイヤー装置を付けて、歯を動かす治療法です。
金属の装置を使用する場合には、他の治療法と比較して費用が安価になりますが、目立ちやすいといったデメリットがあります。
しかし透明のプラスチックやセラミックのブラケット、白やゴールド等のワイヤー装置に変更することで口元を目立ちにくくできます。
参考までに当院の表側矯正の治療費は
1,177,000円(税込)になります。
裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正は歯の内側にワイヤー装置を付けて、歯並びをキレイにする治療法です。
歯の内側に装置を付けるため、他人に矯正治療を知られる心配がほとんどありません。
開咬の原因が悪習癖である場合には、裏側矯正が効果的でしょう。歯並びがキレイになっても悪習癖が残っていると後戻り(歯が元の位置に戻ること)が起きやすいです。
舌に装置が当たる不快感で自然と、歯を押す癖が改善する可能性があります。
その結果、矯正完了後の後戻りのリスクが軽減されます。
裏側矯正の装置はオーダーメイドで歯科医師の高度な技術が必要になるため、費用が高額になりやすいです。
費用相場は1,200,000円〜1,500,000円になり、当院の裏側矯正の治療費は1,397,000円(税込)です。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は上あごは裏側に、下あごは表側にワイヤー装置を付けて治療を進める方法です。
下あごは表側に装置を付けますが、唇で隠れるため目立ちにくくできるのが特徴。
しかし重度の開咬では、前歯が突き出ているケースが多く、装置が唇で隠れず目立ってしまうことがあります。
ハーフリンガル矯正の費用相場は900,000円〜1,400,000円で、当院のハーフリンガル矯正費は1,287,000円(税込)です。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正はマウスピースを交換しながら、少しずつ歯並びを整える治療法です。
透明のマウスピースは口内に入れても目立ちにくく、他人から矯正しているのを気づかれにくいのが特徴。
またマウスピース型矯正は、開咬の治療費に向いていることがあります。
たとえば、開咬の前歯が前に突き出ている場合には、前歯を内側に傾斜させる動きや奥歯を歯茎側に圧下(沈める)する動きを治療に組み込むことで、前歯が近づき口が閉じやすくなります。
マウスピース型矯正はこれらの動きを得意としていて、効率的に歯を動かしていきます。
ただし、理想的な歯並びのゴールや歯並びの難易度によってマウスピース型矯正ができないケースも少なくありません。
そのためマウスピース型矯正装置で開咬の治療を希望している方は、実績が豊富な歯科医院を選ぶことが大切です。
なお、当院ではマウスピース型矯正を取り入れています。
外科的矯正
外科的矯正は一部のあごを切り取って、噛み合わせを正しい位置に動かす治療法です。
開咬の原因が骨格の場合は、外科手術が必要なケースも少なくありません。
外科手術では全身麻酔を行うことがあり、身体的負担が大きい点がデメリット。
いっぽう、外科的矯正は重度の開咬にも対応できるのがメリットです。
さらに手術では、余分なあごの骨の一部を切り取って後方に下げるため、スッキリとした横顔になります。
一般的にはある程度、矯正装置で歯並びを整えてから外科処置を行いますが、治療期間が長くなる傾向です。
当院ではサージュリーファーストといって先に外科手術を行った後、矯正装置を併用して歯並びを整えていきます。
その結果、早期による見た目の改善や治療期間の短縮などに繋がります。矯正治療は基本的に見た目の改善が目的で自費診療になりますが、下記の条件を満たす場合には矯正治療が保険適応になるため、あらかじめ確認しておきましょう。
● 生まれながらにして口内に異常がみられる先天性疾患
● 顎の骨の大きさ、位置、形が著しく異常である顎変形症
● 前歯が3歯以上の永久歯萌出不全が原因の咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
開咬の矯正治療を受ける時の注意点
ここでは矯正治療の2つの時期に焦点を当てて、注意することを見ていきましょう。
● 矯正治療中に注意すること
● 矯正終了後に注意すること
矯正治療中に注意すること
ワイヤー矯正を選択した場合は、事前に歯科医師や歯科衛生士から歯磨き指導を受けることをおすすめします。
ブラケット装置は食べかすが溜まりやすく、磨き残しがあると虫歯や歯周病を発症することがあるためです。
またマウスピース型矯正を選んだ場合には、装着時間や交換時期を必ず守ってください。
マウスピースの20時間以上の装着や指定された日数での交換が守れないと、歯が動かず治療期間が延長し、費用がかさむことも少なくありません。
さらに歯を押す、低舌位などの癖が残ったままでは歯が元に戻ってしまいます。
そのため、矯正治療と同時にMFT(Oral Myofunctional Therapy)という口腔筋機能療法という口の周りの筋肉をトレーニングを行い、癖を改善するようにしましょう。
トレーニング方法は癖によって異なり、毎日の積み重ねが大事になります。
矯正終了後に注意すること
矯正完了が、治療の終わりではありません。歯並びが整った後は、保定治療期間に移ります。
保定期間とはリテーナーを付けて、歯の位置を固定する時期のこと。歯は元の位置に戻ろうとする性質があり、特に矯正後〜6ヶ月は歯が動きやすい期間と言われています。
矯正後は担当医に指示された装着時間を守り、キレイな歯並びを維持しましょう。
まとめ
開咬は矯正治療で改善できます。
開咬を放置していると、虫歯や歯周病だけでなく顎関節症や全身的な悪影響を及ぼす可能性があります。
矯正治療を行う場合には担当医と話し合い、自分にあった治療法を選択することが大切です。
開咬の症例はホームページやインスタグラム、x、TikTokに掲載しています。
是非ご覧ください。